散開星団

 日本では1960年の完成以来長い間、最大の望遠鏡は岡山天体物理観測所にある188cm反射望遠鏡であった。その間世界各国の天文台では4m級望遠鏡の時代を経て、8m級望遠鏡、そして宇宙望遠鏡の時代へと突入していった。日本はこの間、少なくとも光学分野では世界の最前線から取り残された天文後進国となってしまっていた。しかし、1999年、よく知られているように、ようやく国立天文台ハワイ観測所に口径8.2mの大型光学赤外線望遠鏡が完成しファーストライトを迎えた。世界の第一線に立ったのである。しかもこの望遠鏡は能動光学・補償光学の機構を備えており、常に最高の画像が得られるよう超ハイテク技術がおしみなく投入されている。集光力ではハッブル宇宙望遠鏡をはるかにしのぎ、画像のみならずスペクトル分光観測に威力を発揮するであろうと期待されている。なまえは「すばる望遠鏡」、「すばる」という名称は冬の夜空に輝く散開星団プレアデスの和名であり、れっきとした日本語である。「六つ星」などともいわれ眼の良い人には星に分かれて見えるらしい。双眼鏡で眺めると視野内にほどよくおさまりとても美しい眺めとなる。

 

 散開星団「すばる」を構成する星たちは生まれてからまだ5000万年ほどの青白い若い星たちである。しかし、これらの星たちも、やがてはそれぞれの固有運動によってちりぢりになっていってしまうであろう。こうして星が年齢を経ていくと散開星団としてのまとまった形は消えてしまう。したがって、散開星団であるということは一般に若い、つまり比較的最近になって生成された第二、第三世代の種族Ⅰとよばれる星たちで構成されている。星は超新星爆発などによって星間物質にもどり、重力によって再び星になる。このくり返しのなかで星内部で作られた重元素量が増えていくから、後の世代の星の方が重元素量が多い。つまり最近生まれた若い散開星団ほど岩石や金属からなる惑星系が多いであろうし、したがって知的生命体が発生する可能性も高いと考えられるのではないだろうか。もし仮に今はこの地球だけにしか知的生命体が存在していないとしても、これだけ多くの散開星団を含む銀河系の未来は知的生命体ETで満ちあふれているのかもしれない。