冷却改造デジタル一眼レフ

冷却改造デジタル一眼レフ ASTRO 50D  放熱のためのファンが側面に装着されている。

 デジタル一眼・・・なかなかよく写る。でも、ノイズが弱点・・・ダーク減算ソフト(RAP)で処理すればノイズがきれいに消えることは消えるのですが、いかんせん夏場の長時間露出では露光中にセンサー自体の温度が上がりすぎて、本来の性能が出なくなる。やはり季節を問わず、いつでも“冷却”が理想であります・・・というわけで、キヤノン EOS 50Dのローパスフィルターを天体用(Hα透過・UV/IRカット)に換装し、さらにペルチエ素子でCMOSセンサーを冷却するよう改造した、いわゆる冷却改造デジタル一眼レフ ASTRO 50D(セントラルDS社製)を導入しました。さて、冷却の効果は如何なものでありましょう??

 ファーストライトは“干潟星雲M8”とそこにひそむ“砂時計”
であります。砂時計付近は明るいので、長時間露出では飽和し白くつぶれてわからなくなってしまいます。そこで露出は5分(ISO3200)に抑えて撮影してみました。撮影時期は8月・・・夏のど真ん中です。

(1)撮影したそのままの画像

M8 干潟星雲

35cmシュミットカセグレン望遠鏡

レデューサー

合成焦点距離2485mm(F7)

露出5分を3枚コンポジット合成(加算平均)

ASTRO 50D(冷却 EOS 50D)

ISO3200

ホワイトバランス  オート

NBN-PVフィルター

 ステライメージで、コンポジット合成(加算平均)をしてからソフトビニングしただけで、他に何の処理もしていない画像です。若干存在したノイズは5×5ソフトビニングで見えなくなりました。狙いが的中し、ノートリミングで砂時計がど真ん中に写っています。NBN-PVフィルターを使用しましたが、このカメラでは星の色は比較的自然な感じです。

 

 このカメラ(EOS 50D)に付属しているデジタルフォトプロフェッショナル(DPP)という専用ソフトを使うと、オートライティングオプティマイザ(ALO)やノイズリダクション(NR)といった、本来、撮影時にカメラ側で行う処理を、撮影後にパソコンで行うことができます。

 バルブで露光する天体撮影ではマニュアル露出で露光しますが、ALOはマニュアル露出のときは機能しませんし、撮影時にノイズリダクションを行うと、2倍の撮影時間が必要となり効率的ではありません。そこで、DPPで処理をしてみました。

(2)DPPでノイズリダクションをした処理画像

 冷却カメラなので、もともとノイズは少ないわけですが、さらにパソコン上でノイズを消し去ります。

作業手順は
①DPPを起動し、撮影したRAW画像を全部選択する。
②表示→ツールパレット→NR(輝度・色ノイズ共に緩和レベルは最高の20)でNRを実行する。
③保存先フォルダを指定して、一括保存でTIFF形式で保存する。
④ステライメージでコンポジット合成→画像処理を行う。
という流れになります。

 なめらかで色彩感のある画像になりました。デジタル現像処理はしていませんが、砂時計は見えています。

(3)DPPでオートライティングオプティマイザとノイズリダクションをした処理画像

 作業手順は(2)と同様ですが、②でNR実行時にALOの設定も同時に行いました。この画像ではALOは「標準」に設定しています。

 インパクトのある画像になりました。“砂時計”のあたりを見比べると違いがよく分かります。また、この比較から、ALOについては画像によっては必要ないことも分かります。

  
 どうやら、少なくともノイズについては、ダーク画像を撮影してダーク減算をしなくても、DPPでノイズリダクションを行えば十分といえそうです。ダーク減算ソフトによるノイズリダクションと冷却の効果は絶大であります。

 

 

冷却の 力にまさる ものは無し