惑星状星雲

 46億年前、銀河系のかたすみにあるガス雲の小さなゆらぎから私たちの太陽系が生まれた。太陽は9つの惑星とおびただしい数の小惑星を照らし続け、ときにその巨大な重力で太陽系外縁部にある氷の天体を引きつけ、彗星として私たちの眼を楽しませてくれる。太陽のエネルギーは地球上にはかりしれない恩恵をもたらし、生命をはぐくみ、その進化を支え続けてきた。この進化の頂点に今人類がいることはいうまでもない。これから先この人類文明はどうなっていくのであろうか。太陽の寿命はあと約50億年はあるといわれている。そのころ水素燃料を使い果たしてしまった太陽は数百倍の大きさに膨張し、いわゆる赤色巨星としてその最期をむかえようとしているだろう。外縁のガスは地球軌道をも完全に飲み込んでしまっているだろうといわれている。宇宙の歴史から見ればほんの一瞬ともいえるたかだか数100年という人類文明は、そのときまで発展しつづけているであろうか。あるいはもうすでに自滅への道を進み終わっているのであろうか。生き続けているとしたら、どんな姿になっているのであろうか。いま、人類はSETIすなわち地球外知的生命体の探査に本格的に取り組み始めたところである。宇宙文明は存在するのであろうか。また、もし存在するとすれば地球文明はその一員となりうるのだろうか。

 

 この宇宙には50億年後の太陽と同様にその最期をむかえた恒星の姿である天体がたくさん発見されている。すなわち「惑星状星雲」である。赤色巨星から吐き出されたガスが広がり、その星は白色わい星となって中心にかぼそく光っている。望遠鏡で観察すると丸く小さくあたかも惑星のように見えることからこの名称がついたのであるが、いわゆる惑星とは何の関係もないことはいうまでもない。

 

 惑星状星雲は一般に視直径が非常に小さい。そこで細部の様子を撮影するためには大きな拡大率を必要とする。さらに中心星からの紫外線によって励起されたガスの原子が光るという発光メカニズムをもっているので、その光は強い輝線スペクトルを含んでいる。一般に通常の電離水素による波長6563Åの赤色の輝線であるHα線だけでなく、非常に希薄なガス中でのみ発光する禁制線と呼ばれる二階電離酸素による〔OⅢ〕線つまり波長5007Å、4959Åの緑色の輝線などをスペクトルとして多く含んでいる。したがって惑星状星雲の輝線スペクトル部分に対する透過率が高く、市街光の水銀灯などによる輝線スペクトル部分をカットすることのできる干渉フィルターを用いることにより、画像のSN比を改善することができる。さまざまな惑星状星雲の写真画像を見ながら、太陽系の未来に思いをめぐらしてみたい。