銀河グループM66群の重力相互作用

 しし座の銀河グループM66群の3つの銀河・・・どうも普通ではない・・・変形してゆがんでいます。見かけ上、角度にしてわずか1度にも満たない狭い領域にあるのですが、実際にもけっこう接近していて、お互いに重力をおよぼし合って、ゆがんでしまったのだろうと思えてきます。

12.5cmライトシュミットカメラ(f 475mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影

8分露光×4(加算平均) ISO1600

※画像の横幅は約1度です。

 M66の大きさが約6万光年であることを考えると、M66からM65までの距離はこの画像から最短20万光年程度ということになります。小マゼラン雲までの距離が22万光年であることを考えると、ずいぶん接近している可能性があるといえるでしょう。こうなると、重力相互作用をおよぼし合っていて当然ということになります。

★M66の画像から

35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影

15分露光×3(加算平均) ISO1600

 グループでもっとも明るい9等級クラスのM66・・・渦巻の腕が南北に引っ張られたように変形してしていることはすぐわかりますが、画像を90度回転させて水平にしてみると別の事実に気がつきます。

 バルジの面と腕の周縁部の面がずれているようです。つまり・・・

ということになります。こうした“ゆがみ”によって、あちこちに見える赤いHⅡ領域の水素と暗黒のダストに“密度ゆらぎ”がさらに生じ、今後も活発に星が生まれていくのではないかと思えてきます。

★M65の画像から

35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影

15分露光×3(加算平均) ISO1600

 一見、均整のとれた渦巻銀河です。暗黒のダストレーンもきれいに見えています。バルジのようすから、視線方向に棒状構造がありそうに思えます。やはり、画像を90度回転させて水平にしてみます。

 やはり、バルジの面と腕の周縁部の面がずれているようです。つまり・・・

ということになります。M66と比較してゆがみはわずかですが、水平にしてみると分かりやすくなるようです。

★NGC3628の画像から

35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影

15分露光×3(加算平均) ISO1600 

※拡大率は上のM66、M65の2/3になっています。

 両サイドが膨らんだユニークなエッジオンです。暗黒帯には赤いHⅡ領域も見えています。画像を少し回転させて水平にしてみます。

 やはり、バルジの面と腕の周縁部の面がずれているようで、暗黒帯が周縁部でカーブしています。

 こうして見るとどうでしょう・・・写真では遠近感がないので、この3つの銀河が視線方向にどの程度離れているかはっきりしませんが、銀河の見かけの大きさがほとんど同じであることを考えると、空間的にもひとかたまりになっているように思えます。そして、お互いに重力相互作用をおよぼし合ってゆがんでいる・・・と考えるのが自然でしょう。

 

※重力相互作用とは万有引力のことで、この場合は「潮汐力」として働きます。万有引力の大きさは距離の2乗に反比例しますから、質点以外の体積体では場所によって距離が異なることになるので、力の大きさも異なり、結局ひきちぎるような力(潮汐力)として働くことになります。潮汐力は地球上では潮の満ち引きを起こす力として知られていますが、宇宙的なところでは、たとえば「ブラックホールに吸い込まれる宇宙飛行士の体が引き伸ばされる」という話になります。