銀河のバルジ

 いて座にある私たちの銀河系の中心・・・巨大ブラックホールに吸い込まれていく物質が強烈なエネルギーを放っているにもかかわらず、それは残念ながら可視光では見ることができません。銀河系円盤の分厚いダストが邪魔をしているわけです。でも、銀河円盤をななめから見ている格好の、よその銀河なら中心のようすをうかがうことができます。たとえば、アンドロメダ銀河・・・銀河円盤のバルジの中心が異様に輝いていることがわかります。きっと、ここはとてつもないエネルギーを放っているのでしょう。こんなに遠くで、こんなに明るい・・・やはり、ブラックホール※1の存在を感じてしまいます。

アンドロメダ銀河M31のバルジ中心部

35cmシュミットカセグレン+ペンタックスMX にて撮影

 もうちょっと遠くにある、均整のとれた美しいSb型渦巻銀河であるM63に目を向けてみましょう。この銀河はりょうけん座2350万光年の距離にあります。中心部のとても明るいバルジをとりまくように、暗黒のダストと明るい恒星雲の入り混じった渦状腕が広がっています。まるで、ひまわりの花のごとく・・・というわけで「ひまわり銀河」とよばれています。バルジは小さめですが、中心付近は明るすぎて白くつぶれてしまっています。

M63

35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影

15分露光×3(加算平均) ISO1600

 ひまわりの花びら、つまり渦状腕は無視して、同じ元画像からバルジのみに照準を合わせた画像処理をしてみると、下の画像ができあがりました。(上の画像の3倍の拡大率になっています)

 アンドロメダ銀河と同じように、やはり中心にはかなり狭い範囲に、異様に明るい、強烈なエネルギーを放っていると思われる領域があります。2350万光年もの距離にありながら、まるで恒星のごとく輝いています。

M63のバルジ

35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影

15分露光×3(加算平均) ISO1600

 それにしても、ごくごく普通のSb型渦巻銀河であるM63のバルジ中心の異様な明るさ・・・数千億もの星々を引きつけて、離さず公転運動をさせている銀河中心・・・銀河の星々の公転速度から、ダークマター※2が星々の公転運動をささえているともいえるわけですが・・・、そのダークマターをも引きつけて離さないバルジ中心ともいえるわけです。ものすごい重力源なのでしょう。銀河中心には、巨大ブラックホールが居座っているとよくいわれますが、きっとそこは想像を絶するものすごい世界なんだろうなと思えてしまいます。

※1 ブラックホール自体は、光をも吸い込んでしまうので見ることはできません。しかし、ブラックホールに吸い込まれいく物質が高エネルギー状態になり、さまざまな電磁波を強烈に放出するため観測されるのです。

 

※2 太陽系の惑星の公転速度は、公転半径の平方根に反比例して外側の惑星ほど小さくなります。これは、太陽を質点と考えることで説明できます。しかし、渦巻銀河の星々の公転速度は公転半径によらずほぼ一定なのです。この事実から、大量の見えない物質つまりダークマターの存在が示唆されています。