星空のスワン

 星空のスワン・・・なんとも詩的でロマンチックな響きであります。スワン(swan)とは白鳥のこと・・・星空に浮かぶ白鳥というわけであります。でも、この白鳥星雲M17は、いて座の方向3300光年もの遠くにあって、望遠鏡を使わないと見ることはできません。望遠鏡でどんなふうに見えるか・・・肉眼の感度は緑が高いといわれます・・・そこで、撮影した元画像のG画像(緑成分)をぼかし系フィルターで処理して、眼視イメージを再現してみました。まさに、白鳥であります。

望遠鏡による眼視イメージ

 望遠鏡のアイピースを通して見る星雲の姿は、直接見ている実感があり、何ものにも代え難い魅力がありますが、やはり写真にしてみたいものです。通常の北を上にした画像を回転して、白鳥の姿がわかりやすくなるような画像を作ってみました。

2007年8月14日 35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影
15分露光×4(加算平均) ISO1600 ホワイトバランス  オート 
UIBAR&NBN-PVフィルター

  白鳥の首で囲まれた領域は、クッキリとした濃密な暗黒のダストが手前側にあるため、光を遮って真っ暗です。逆に胴体はかなり明るく、白くなっています。そこで、デジタル現像をして胴体の構造もわかりやすい画像を作ってみました。

デジタル現像をした画像

 白鳥が水面に浮かんでいるものとすると、その水面は直線的でありながら波打っていて、もうちょっとよく見てみたくなります。そこで、元画像を3色分解、Hα線の赤色成分の強調を期待して青色成分を除外し、赤と緑の2色合成をした画像を作ってみました。NBN-PVフィルター※1を使って撮影しているので、赤は水素輝線、緑は酸素輝線に対応していると思われます。ただ、緑はダストによる反射成分を拾っている可能性もありますが・・・。赤と緑の2色合成画像は、HαフィルターとOⅢフィルターの組み合わせに近い効果があるのでしょう・・・星雲の構造が視覚的にとらえやすくなるようです。

赤と緑の2色合成画像

 どうやら、光と影のようすを見ると、水面に対して上の方から誕生した星からの紫外線がふりそそいで、水面の水素をはげしく電離して光り輝いているようです。そして、水面下は大量の濃密なダストによって紫外線が遮られ、水素をほとんど電離できずに影になっているようです。そうすると、この水面は全長およそ10光年ほどの、ガスを含んだ巨大なダスト※2の壁構造であると考えられます。

 星空のスワン・・・もっともっとたくさん星を生んでいって、いつかは消えていってしまうのでしょう。そして、酸素が豊富にあるなら、新たな生命体をも生み出していくのかもしれません。

※1 NBN-PVフィルターの分光特性は、475nm~510nmと650nm以上を透過する特性です。なお、酸素のOⅢ線は495.8nmと500.7nmの緑色、水素のHα線は656.3nmの赤色とされています。


※2 濃密なガスやダストの塊があると、それが重力で収縮し星が誕生していくと考えられています。