ケフェウス座のIC1470・・・長きにわたり惑星状星雲と思われてきたようです。たしかに眼視では微星のまわりのぼんやりとした光芒に見えるし、その大きさも1分角程度・・・つまり、木星よりちょっと大きい程度なので、一見「惑星状星雲」なのであります。短時間露光でも良く写り、均整のとれた姿はペンダントのデザインにでもなりそうであります。
IC1470
2007年9月16日 35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影
2分露光×6(加算平均) ISO1600 UIBAR&NRF-JPNフィルター
しかし、惑星状星雲にしてはなんとなく“変”です。まず、球殻状の様相がない。それから、Y字形の暗黒帯が見られる。さらに、非常にうっすらとした赤く淡いガスの存在が感じられるのです。そこで、特殊な画像処理を行って、淡い光も強調してみました。すると・・・
特殊な画像処理により、IC1470本体のまわりに赤い星雲(HⅡ領域)が広がっていることがわかります。
※元画像は上の2分露光のものと同じ
うーん、やっぱりありますね・・・赤い光が。というわけで、長時間露光をしてみる価値がありそうです。そうして得られた画像が下の画像です。赤いHⅡ領域が確かに広がっている。つまり「散光星雲」いいかえれば「星生成領域」・・・ですから、中心星と思われる星は「生まれたての星」でありましょう。そして、この星からの強い紫外線によって電離した水素が発光しているのでしょう。
2007年10月6日 35cmシュミットカセグレン(レデューサー f 2485mm)+キヤノン EOS kiss D にて撮影
20分露光×3(加算平均) ISO1600 UIBAR&NBN-PVフィルター
・・・とすると、このあたりには水素がけっこう豊富にありそうな気がしてきます。ノートリミングで探ってみることにします。画角は約30′×20′です。すると、ありました・・・ほかにもHⅡ領域が。非常に淡いものですが、なんとか見えています。
ノートリミング画像です。とても淡いのですが、他のHⅡ領域が矢印の先に見えています。
※元画像は上の20分露光のものと同じ
このあたりは、きっと水素ガスと暗黒のダストが入り混じっていて、たまたま新しい星が生まれるとHⅡ領域としてかがやくのではないでしょうか。銀河系内部ですから、本当に真空というわけではない・・・そういう宇宙空間でのごく普通の景色なのでしょう。