平凡な銀河と爆発銀河

天の川銀河によく似たM31アンドロメダ銀河

 天の川銀河・・・直径10万光年の円盤状に、およそ1000億個もの恒星が集まった大集団・・・そのかたすみに私たちは住んでいます。私たちはその中に住んでいるので、その外観は分かりませんが、渦巻銀河であることは間違いないでしょう。地球からは、全天をぐるーっとひとまわりした“天の川”としてしか見えません。しかし、この天の川に望遠鏡を向けると、おびただしい数の星々が視野に広がり、まさに星の大集団の中に私たちが住んでいることが実感できます。太陽系は約2億年をかけて、この天の川銀河の中を一周しているといわれていますが、そうすると地球が誕生してからの46億年間に20周以上も天の川銀河の中を旅してきたことになります。銀河円盤も回転していますから、星間空間を単純に20周突っ走ってきたわけではありませんが、密度波の存在を考えると、ときには濃い星間雲や間近での超新星爆発に遭遇してきたのかもしれません。でも、なんとかこの46億年間は無事でした。

 私たちの天の川銀河によく似ているとされる銀河があります。お隣り・・・といっても230万光年もの距離ですが・・・M31アンドロメダ銀河です。直径は天の川銀河よりひとまわり大きく13万光年とされています。

M31 アンドロメダ銀河

12.5cmライトシュミットカメラ

焦点距離475mm(F3.8)

露出8分を4枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D 

ISO1600

ホワイトバランス  オート

天体用赤外カット&NRF-JPNフィルター

 渦巻銀河の円盤をななめ方向から見ているので、このような姿に見えています。中心部は肉眼でも存在が分かるほど明るく、ちょうど、天の川銀河に大小マゼラン雲が存在するように、2個の伴銀河、M32とM110をしたがえています。暗い暗黒帯のスジが見えていますが、太い2本は望遠鏡を使えば眼視でも見ることができます。明るい中心部の真ん中は特に明るく、ブラックホールが存在すると考えられています。ブラックホールに吸い込まれる物質が高エネルギー状態になって、強烈な光などの電磁波を出していると考えられているのです。

M31 アンドロメダ銀河の中心部

35cmシュミットカセグレン望遠鏡

焦点距離3910mm(F11)

露出20分を2枚コンポジット合成(加算平均)

ペンタックスMX

スーパーGエース800

NRF-JPNフィルター

 上の画像はアンドロメダ銀河のバルジのようすが見えています。画像の横幅は約8000光年に相当しますから、中心には狭い領域に非常に明るい核があることがわかります。また、銀河中心のかなり近くにも暗黒物質のダストがシルエットになって入りこんでいるようすがわかります。残念ながら、私たちの天の川銀河の中心は銀河赤道面にある星間物質のダストが邪魔をして直接見ることはできないのですが、M31ではななめから見ているので中心を直接覗くことができるのです。

 アンドロメダ銀河のかたすみには、ひときわ大きなスタークラウド(恒星雲)があります。一度に、はかりしれないほど大量の星が生まれるような出来事があったのでしょう。

アンドロメダ銀河のかたすみにあるスタークラウドNGC206

35cmシュミットカセグレン望遠鏡

レデューサー

合成焦点距離2485mm(F7)

露出8分を6枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D

ISO1600

ホワイトバランス  オート

UIBAR&NRF-JPNフィルター

 中央の雲状でツブツブ感のある天体がNGC206です。230万光年もの彼方にあるアンドロメダ銀河M31の渦巻腕の中、その南端近くにある星の大集団・・・スタークラウドです。およそ2900光年×1400光年の大きさの光のかたまりの中に太陽の1万倍以上も明るい星が200~300個あると考えられていますが、それがツブツブした感じに見えているのでしょう。暗い星にいたっては数えきれないほどあるだろうと考えられています。一般的な散開星団の直径が数10光年であることを考えると、その100倍・・・体積にして100万倍ということになります。

天の川銀河を真横から見た姿に似たNGC891

 天の川銀河を真横から外観することができたら、どんな姿に見えるでしょうか。空の暗い光害のないところで天の川を見ると、ところどころ川が分かれて、暗く中州のようになっているところがあることに気づきます。ここには何もないのではなく、大量の暗黒のダストが存在しているのです。銀河円盤の中央には暗黒のダストが存在しているのです。ですから真横から外観することができたら、きっと中央は暗い暗黒帯で区切られたように見えるでしょう。まさに、そんなふうに見えている銀河があります。同じアンドロメダ座にあるNGC891です。ただし、こちらは数千万光年もの彼方です。

NGC891

35cmシュミットカセグレン望遠鏡

レデューサー

合成焦点距離2485mm(F7)

露出15分を5枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D

ISO1600

ホワイトバランス  オート

UIBAR&NRF-JPNフィルター

 まさに、まっぷたつです。中央の膨らんだバルジには、そのど真ん中にはやはりブラックホールがあって、ものすごく明るいのかもしれませんが、この暗黒帯のダストにさえぎられ見ることはできません。そして、暗黒帯のあたりには、電離水素の赤い光も見えています。私たちの天の川銀河も同様で、中心はいて座の方向にあるのですが、やはりダストにさえぎられ見ることはできないのです。しかし、可視光では見えなくとも他の電磁波による観測から、ブラックホールの存在は確実のようです。でも、太陽系は中心から28000光年も離れたかたすみにあるので大丈夫・・・平穏なのです。

 私たちの天の川銀河は、M31やNGC891のようにごくありふれた“平凡な銀河”です。でも、それはそれでよかったのでしょう・・・太陽系誕生以来、46億年間はなんとか無事でした。その結果として、現在の地球そして人類の繁栄もあるわけです。しかし、近年、あのM31アンドロメダ銀河がじわじわと近づいて来ているのだといわれています。重力相互作用のしわざです。そして、いつかは衝突・合体をしてしまうだろうと考えられています。そのころ、太陽系は、地球は、人類はどうなっているのでしょう。

 銀河どうしは、しばしば集団をつくり銀河群として存在しています。天の川銀河とアンドロメダ銀河もさんかく座のM33やいくつもの矮小銀河と集団をつくり、局部銀河群とよばれています。そうした銀河群の中で銀河どうしが接近し合うと、重力相互作用が強く効いてきて銀河そのものの形を変形させるようになります。

ちょっとゆがんだ銀河NGC3628

 次の画像はしし座のM66銀河群の一員であるNGC3628です

NGC3628

35cmシュミットカセグレン望遠鏡

レデューサー

合成焦点距離2485mm(F7)

露出15分を3枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D

ISO1600

ホワイトバランス  オート

UIBAR&NRF-JPNフィルター

 なんだか少し変形しています。NGC891をちょっとゆがめたような姿です。この銀河が属するM66群は見るからにけっこう接近していて、せいぜい数10万光年以内に収まっているように見えます。

M66群

12.5cmライトシュミットカメラ

475mm F3.8

露出8分を4枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D

ISO1600

ホワイトバランス  オート

UIBAR&NRF-JPNフィルター

 NGC3628もNGC891と同様、暗黒帯のあたりには、電離水素の赤い光も見えています。でも、M65やM66に接近しているため、重力相互作用で変形してゆがんでいるのでしょう。しかし、もっとゆがんだらどうなるのでしょう。銀河内部のガスが攪乱され大質量星が大量に誕生し、一斉に超新星爆発をしたとしたら・・・赤い光の電離水素をまき散らしながら、爆発しているように見える・・・そんな銀河があります。

爆発銀河M82

 おおぐま座の方向1790万光年の距離にあるM82で、X線源としても知られています。さしわたし6万光年位の比較的小さな銀河の中心部で何か特別な現象、それは激しい星生成やたくさんの超新星爆発が起こっているのではないかといわれています。そして、そこから電離水素の赤いガスが吹き出しているのだろうと考えられています。見るからに何か激しいものを感じさせる銀河です。

M82

35cmシュミットカセグレン望遠鏡

レデューサー

合成焦点距離2485mm(F7)

露出8分を8枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D

ISO1600

ホワイトバランス  オート

UIBAR&NRF-JPNフィルター

 M82はM81群の一員で、お隣にあるM81銀河との相互作用によってこのような姿になったともいわれていますが、なぜこの銀河にだけこうしたことが起こっているのでしょうか。

M81群

12.5cmライトシュミットカメラ

475mm F3.8

露出10分を4枚コンポジット合成(加算平均)

キヤノンEOS kiss D

ISO1600

ホワイトバランス  オート

UIBAR&NRF-JPNフィルター

 かつて、この2つの銀河はニアミスをしたため、M82はM81との重力相互作用で爆発的な星形成が進んでいて、特異な爆発銀河として見えていると考えられています。でもやはり、なぜこの銀河にだけこうしたことが起こっているのでしょう。

 私たちの天の川銀河も、いずれアンドロメダ銀河との接近・遭遇が待っています・・・いったい、どんな姿になってしまうのでしょうか。そのときも太陽系は無事でいられるのでしょうか。誰にもわからないのです。