NGC7635泡星雲の泡の色

 泡星雲とよばれるNGC7635の泡・・・よくよく見ると、どうもまわりと色がちがいます。

 Bの円弧状の領域がいわゆる“泡”ですが、なんだかここは真っ赤じゃない、ちょっと紫がかった色にみえます。きっと、Hα線だけではないのでしょう。そこで、画像処理していない元画像を3色分解してみました。すると・・・

R画像(赤)

G画像(緑)

B画像(青)


 Aの領域はR画像でのみ見えますから、ほぼHα線のみで光っていると考えられます。つまり、ここは純然たる星間ガスの電離水素領域でしょう。でも、BとCの領域はG画像やB画像でも見えています。Cの領域は明るいので露出オーバーとなり、白くなっているので、G画像やB画像でも見えているのでしょう。しかし、泡に見えるBの領域は、ほぼ同じ明るさのAの領域とはずいぶん違うスペクトルだと思えてきます。

 惑星状星雲では希薄なガスの原子による禁制線とよばれる輝線スペクトルが発せられカラフルな姿が見られることが多いのですが、散光星雲でもガスが希薄なため同様に禁制線が見られます。Bの領域でG画像やB画像が明るいということは、まわりに存在するAのようなふつうの星間ガスよりも、酸素原子によるOⅢ線が強いことと、Hβ線も強い可能性があります。だとすれば、ガスのようすもまわりの領域とは異なることが推察されます。

 一般に、高温の領域や、ガスの衝突などにより衝撃波ができ加熱されているような領域では5007Åの酸素原子の禁制線(OⅢ線)が強くなるといわれています。そう考えると、Bの領域は単に酸素原子が多いというより、“大質量星”から放出された恒星風のガスが周囲のガスに衝突してできた衝撃波面が発光しているというような、かなり高温で特殊な状態にあると思えてきます。

 この“大質量星”は、距離が遠いので8等星でしかありませんが、実際は太陽の40倍もの質量をもつといわれています。きっとすさまじい恒星風が吹いていて、星間ガスとの衝突、衝撃波面の形成・・・それらがこの“大質量星”の発する強烈な紫外線にあぶられ泡のように見えているのでしょう。