NGC2264にみる侵食の造形

 ベテルギウス、プロキオンそしてシリウスといえば冬の大三角、この中には意外とあまり知られていない星座「いっかくじゅう座」があります。しかし、この領域には天の川があり、有名で魅力的な天体がたくさんあります。ばら星雲やハッブルの変光星雲がよく知られていますが、NGC2264コーン星雲もよく知られた天体のひとつであります。ばら星雲は双眼鏡で丸い形に、ハッブルの変光星雲は望遠鏡で三角形の彗星状の形が確認できますが、この「コーン星雲」はとても淡く、眼視ではまず見ることはできません。しかし、十分な露光時間を与えることで、その姿を画像として見ることができます。(画像1)

NGC2264コーン星雲(画像1)

35cmシュミットカセグレン望遠鏡
レデューサー 

合成焦点距離2485mm(F7)
 15分露光を4枚コンポジット合成(加算平均)
ASTRO 50D(冷却 EOS 50D) 

ISO3200

ホワイトバランス  オート
NBN-PVフィルター

 コーンとは円錐のことです。赤く輝く星雲の中に、巨大な円錐が見えています。円錐の先端は赤く輝き、本体は暗い暗黒のシルエットとして見えています。赤い光は電離水素、暗黒のシルエットはダストでしょうから、電離水素やダストを豊富に含んだ分子雲コアが侵食されていくようすを見ていることになります。この“コーン”の中心領域をさらによく見てみます。(画像2)

画像2

 こうした“コーン”は数光年にもわたる壮大な侵食によってつくられていくのでしょう。画面右上方に巨大なエネルギー源になりうる恒星があって、そこからやってくる恒星風などの放射によって侵食されながら、紫外線により水素が電離水素となり赤く発光しているのでしょう。コーンの先端は強烈な紫外線でほぼ完全に電離し真っ赤に輝いていますが、コーン自体はダストが濃すぎて紫外線が行きわたらずほとんど暗黒星雲の状態です。(画像3)

 画像3

 地球からの距離約3300光年のところで星を盛んに生成し続けているであろうコーン、太陽系とは比較にならないほど巨大な数光年もの大きさのコーン、そして、いつかはいくつもの惑星系をつくり出すかもしれないコーンであります。・・・いつかコーンが蒸発してしまうころには、新たな宇宙文明が栄えているのかもしれません。長い時間軸の中で、地球文明がそうした宇宙文明と出会える確率はどのくらいあるのでしょうか。

 地球に似た太陽系外惑星が探査され、いくつか見つかりつつあるかのようにいわれ、それらがハビタブルゾーン
にあるかどうかが問われる今、こうしたコーン星雲のような天体を眺めながら考えをめぐらせるということは、とても意味深いものがあるように思えるのです。

※ ハビタブルゾーン・・・惑星が主星の恒星に近すぎず遠すぎず、適度な温度で水が液体の状態でいられる領域のことです。水のある惑星がこのゾーンの中にあると、生命誕生の可能性が高いと考えられます。地球軌道は太陽のハビタブルゾーンの中に入っているといえます。